トラウマ

「トラウマ」とは誰にでもあるものである。

現に僕にも「トラウマ」というものはいくつも存在する。

・間接キス
間接キスは苦手だ。特に、男同士の。誰かが飲んだ後のジュースとか、口をつけて飲むのがいかんせんできん。
「滝飲み(飲料などを飲む際、口をつけずに大きく口を開けて少し高いところから滝のように口の中に水分を入れる飲み方)なんて言葉も流行ったが、あれでも少ししんどい。
さっき誰かがその飲料を飲んだ際、つば入ってるん違うんとか思ってしまう。
相手がガッキーとか、田中みな実とかやったら別なんだけど、男同士は誰であってもきつい。

これができなくなったのが中1。ある出来事がきっかけ。

当時僕は野球部に所属しており、二つ上の学年に「有馬さん」という先輩がいた。

この有馬さんは中学卒業後、岩手の超名門盛岡大附属高校に進学し、なんと「甲子園出場」を果たした先輩なのである。

間違いなく、自分が味方として野球をしてきた中で1番上手かったし、青山台中野球部の後輩としても「甲子園出場」というのはものすごく誇らしい。ただ、「コイツ」←失礼
のせいで、俺が仲間内で飲み物の回し飲み等をできなくなったのは間違いない。

事件は俺が中1、有馬さんが中3の時に起こった。

我が部では3年神様2年平民1年奴隷という図式が長年伝統として残っており、基本的に1年が3年と親しく話すことはほぼ皆無であった。

しかし、俺と有馬さんは「帰る方向が一緒」ただそれだけの理由で一緒に帰ることが多かった。

部では禁止されていた「買い食い」をたまに北千里のオアシスでやっていた。
本来なら1年が買い食いなどしようものなら3年にぶっ殺されるところだが、実力でも権力でも野球ではトップであった有馬さんと一緒ということもあり、当時まだ純粋な心を持つ俺だったが、あかんことをしているとおもいつつも、買い食いに便乗していた。

ある暑い夏の日、その日も練習を終え、有馬さんと帰路についていると、
「アイスくおか。」と有馬さんが言った。

いつもの如く、北千里のオアシスで買い食い。有馬さんが買ったのは「ビスケットサンド」というアイス。

俺が買ったのはカルピス味のパピコ

アイスを頬張りながら再び帰路に着く。

すると有馬さんが一言。
「それちょっとちょうだいや。俺のアイスもちょっとあげるから。」

と言った。
「いや、有馬さんのアイスもらうなんてそんな失礼なことできないッス。僕のだけ食べてください。」

と、アイスを有馬さんに差し出した。
神様の3年のアイスを1年の奴隷がもらうなんて、例え交換条件としたっていけないことだと自分でブレーキをかけた。なんて純粋。今だったら、

「あ?買えや殺すぞ」と言うだろう。

有馬さんは俺のカルピスのパピコを口に入れた。アイスをかじり、口から離した瞬間、

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ツバ糸がびよーーーん

と有馬さんとパピコを繋いだ。レインボーブリッジかと思った。

綺麗な(汚い)弧を描いてそのツバ糸は、有馬さんの元へと戻っていった。

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ガチで気持ち悪いとかいうそんな簡単な言葉で片付けられるほどの問題ではなかった。

わかる。わかるよ。そうなる理由は。
クソ暑いなか、部活やって口はカラカラ。
そこにあなたが食ってたビスケットサンドのバニラアイス。それ食うたら口の中が甘ったるくなって、唾に「伸縮性」が発生したんだよね。わかる。

わかるけど、多分あの時はお互い童貞だろうし←関係ない
あのツバ糸垂らされて、そのあと食えって平成の拷問ですやん。

そして有馬さんは「ありがと。気にせず俺のも食うてええよ」

と、何事もなかったことのように自らのアイス勧めてくるではないか。
うそだろ。鬼やん。

「有馬エキス」に浸透された自分のアイスでももう食べられへんなって思ってんのに、自らが買うてたバニラアイス勧めてくる!?
あんなツバ糸たらしといて!

有馬半端ないって!
あんなレインボーブリッジみたいなツバ糸たらしといて何事もなかったかのように自分のアイス食わす!?そんなんできひんやん普通!(大迫半端ないって風)

俺「いや、ほんまにいいです(震え声)」

有馬さん「食べろって!遠慮すんな!俺とお前の仲やんけ!先輩後輩ないって!」

もうゲイやんこいつ。
3年後甲子園でるか知らんけど、キモいって。グロいって。
この出来事から現に3年後この人が甲子園出たとき素直に応援出来へんかってんもん。爆笑


どんだけ断っても食わそうとしてくるから、
「では、少しだけ頂きます。ありがとうございます。」

と言う。あのビスケットサンドは、まるでバッタに見えた。バッタ食うような感覚。
ほんの少しかじった。

「うまいやろ!?」と有馬さん。

生産者お前か言うくらい食い気味に。

「うまいです。ありがとうございました。」

すると、俺体は限界を迎えた。

強烈な吐き気。気持ち悪さから一気に出てしまった。

「ヴォェェェェェェェェェェェ」

嘔吐である。いや、大嘔吐。弁当のおかずのミードボールがまだ胃の中で消化でききっておらず、それを見て「あ、ミートボールや。」って思ったのは昨日のことのように覚えてる。

すると有馬さんは
「おい!大丈夫か!?絶対熱中症や!」

と言った。この人が天然で心から良かったと思った。

まさか自分のツバ糸で後輩が嘔吐したなんて思っても見なかっただろう。

その後俺を心配した有馬さんは家まで俺を送ってくれた。
体調は全然大丈夫だったけど、熱中症のフリして体調悪いフリをした。
あの時の俺の演技力は小栗旬並みやったように思う。

団地の5階に住んでいたにも関わらず、有馬さんは5階まで上がってくれた。俺の体を支えながら。確信していた。有馬さんの手が触れるたびに気持ち悪くなっている自分自身に。

家をノックし、我が母親ユミがドアを開ける。

「いつもお世話になっております。青山台中3年有馬と申します。伊藤君が帰宅途中に嘔吐し、熱中症の疑いがあるので連れてまいりました。」

どんな教育受けてきたんやこの人。ツバ糸以外完璧やな。ツバ糸以外。

すると、我が母親ユミが「え!わざわざありがとうね。近くに住んでるの?家とおくないの!?」

と有馬さんに「タメ口」使った時にはほんまに殺そうか迷った笑

「すぐ近くです!気にしないでください!」

と、帰っていった。

「あの子男前やしええ子やなー。ええ先輩もったなーあんた。」





























いや、でもツバ糸グロいで。
とはよう言わんかった笑